かんなみ仏の里(シリ-ズ風景の中へ25)

「仏の里美術館」が伊豆半島の付け根、箱根の麓にあたる函南町桑原に、2年前にオープンしている。秋の1日、仏像鑑賞を楽しんだ。奥まった山里に、美術館はお堂を模した清楚な建築で、仏像の館に相応しい静けさを漂わせていた。


収蔵されている仏像たちは、驚くほど立派なものだった。
平安時代半ばの作で、密教的な重厚な迫力がある「薬師如来坐像」。国指定の重文となった「阿弥陀三尊像」は、鎌倉時代初期の仏師実慶の手になり、端整でかつ力がある。また、平安時代から江戸時代に渡り補充されてきた12神将立像は、優れたもので見ごたえがある。そのほか都合24の仏像が展示されている。


驚くのはこの仏像たちが、大寺院に祀られていたのではなく、里人たちが自費でお堂を建て、そこで1000年もの間守り伝えてきたということだ。案内ボランティアさんに話を伺うと、村では、
「なにがあっても お薬師さん」
といいならわし、真っ先に薬師像を守ってきたのだという。したがってボランティアさんの話にも自然と熱が入る。このたび、区から町に寄贈され町が美術館を立てて保存する体制となったのだという。
私はこれまで岐阜の円空仏や柏崎の木喰仏にあってきたが、いずれも地元の方々がお堂を建て心をこめて守っていた。「かんなみ仏の里」でも、仏に寄せる里人の一様ならぬ深い信心に、思わずため息が出た。


近くの韮山の願成就院には運慶の仏像があり、さらに修禅寺にも実慶作の大日如来がある。伊豆の優れた仏教美術を連携させれば、この地の歴史と信仰に根ざした魅力の発信ができそうだ。


みほとけの坐して千年稲の里
イメージ 1
(上手いアングルで撮れなかった)