名著だ。チャペックの「園芸家12カ月」

枕元に積み上げてある本の中に、チェコの作家カレル・チャペックの「園芸家12カ月」という文庫が紛れている。月ごとに章を設け、園芸家の一年の悩みや喜び、花への執着や悪戦苦闘を、なんとも軽妙にユーモアいっぱいに語っていて名著である。私は月が改まると、ふと思い出してこの本を開いてその月の章を読むのを楽しみにしている。

11月の章では、冬眠についていろいろ書いている。ユーモアではなくて、ちょっと力んだ部分だが、こんな説をかいている。

「春は芽を吹くときだとわたしたちは言っている。…ところが実際は、秋だ。一年の始めは、秋だと言ったほうがむしろ本当に近い。…冬になるから葉は枯れる。しかし、それと同時に、春が始まるから葉は枯れるのだ。爆音とともにそのなかから春がおどり出る。かんしゃく玉のような小さな新しい芽が早くもつくられているからだ。木や潅木が秋に裸になるのは、視覚上のイルージョンに過ぎない」

 

なるほど。そのとおりだ。庭の木々を見ればそれは明らかだね。葉を落とした枝から、新芽が覗いている。秋は寂しいと、老人っぽい感傷にひたるのは、今日のところやめにしておこう。

 

冬の木の一本ずつの細さかな

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庭の夏ツバキの冬芽
 
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「園芸家の12カ月」挿絵・・・挿絵がまた傑作である。
ちなみに、この挿絵を描いた彼の兄、ヨゼフ・チャペックは、ナチス強制収容所で獄中死している。