絵本「ちいさいおうち」とツバメ(風景の中へ30)

冬のツバメのことを書いたが、ついでに、ツバメの絵で以前から気になっていることがある。
「ちいさいおうち」という岩波から出ている絵本の表紙絵のことだが、我が家の古ぼけた版では、ツバメが3羽飛んでいる。これが英語版や日本語の大型版では、ツバメは2羽しかいない。付け加えると、各ページの絵が古い版ではすべて左右が逆である。これはどうしたことなのだろう?
 
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よく知られたストーリーだが、これを日夜読み聞かせると、子供は必ず都会嫌いになる。私はそれで失敗した。これは子どもの本というより大人の本かもしれない。
とくに忘れられないのは、ビルの片隅でじっとしていた「おうち」が、引越し車に乗せられて田舎にむかい、また、昔と同じようなリンゴの木のある丘に着いたとき・・・
「ああ ここが いい」と、ちいさい おうちも、ちいさい こえで いいました。(石井桃子訳)
 
“There” said the great-great-granddaughter
“that’s just the place”
“Yes , it is” said the Little House to herself.
 
名訳だと思う。  
「ああ、ここがいい」・・・この感情を心の中で探して、人はどんなにかさまようことだろう。
 
またついでながら、絵の3羽のツバメは腹が赤くなっている。ほんとは喉だけだと思う。
のど赤き玄鳥ふたつ屋梁にゐて足乳根の母は死にたまふなり(斎藤茂吉
ちいさいおうちの軒に、毎年、ツバメは巣を作ったのかもしれない。日本家屋のように家の中の梁に巣くうことはなかったろうが、ちいさな家でも何代も「母は死にたもう」たことだろう。家はただの空間、構築物ではなく生きられるものなのだ。