菅原洋一さん81歳

寒風や古老のシャンソン聴きし夜
 
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福祉事業に携わる知人の誘いで、チャリティーコンサートにでかけた。唄うは菅原洋一さんで、御歳81歳である。そんな年齢とは思えない堂々たる声で、会場をうならせた。聴衆はお世辞にも若いとはいえない世代が主だったが、みな元気をもらったことだろう。
軽妙なおしゃべりを交え、「知りたくないの」や「今日でお別れ」など、持ち歌を披露した後で、彼は、
実は、今年たった一人の孫をなくしまして・・・、」
と言い始めた。会場がしーんとした。お孫さんは18歳で病で急に衰え、高校の卒業式は友人に脇を支えられながら何とか出席したものの、帰らぬ人となってしまったとのこと。
語り終わってから、「千の風になって」、「花は咲く」、「見上げてごらん夜の星を」を唄われた。これは鎮魂の歌であり心に迫るものがあった。私は、ちあきなおみの「喝采」を思い出していた。
 
歌手は身体が楽器だとよく言われる。先日の「フォレスタ」でもそれを実感させられたし、菅原洋一さんもまさにそうだった。楽器は鳴らされなければ存在意味がない。想像するに、自分の肉体が楽器であるプロの歌い手さんは、おそらく歌わないことには自分の意味がないと思うのかもしれない。そして楽器が上手く鳴り響くときの快感を、あくなく追い求めるのかもしれない。これは歌うことが鎮魂とか死者とのコミュニケーションである、などというものと違うレベルで、優れた歌手に運命づけられた定めであろうか。「生涯現役」と菅原さんが言うとき、深い業のようなものをみせられた思いがした。
 
ちなみに私には、この菅原洋一さんのコンサートを3年連続して楽しむというめったにない経験になったのだった。