チューリップの雨

芽の奥にひかり三月雨の朝

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寒い雨のあとの日の光は、体の緊張がほぐれるような暖かさだ。伸びはじめたチューリップの葉芽の奥に、雨がたまっていて光っている。我が家のチューリップもようやく花の色が現れはじめた。

チューリップというと、富山の砺波平野を思うのだが、もう何年か前の春、というより初夏に近い頃、この平野を走ったことがあった。田に水が入り始め、麦畑が青々していた。もうチューリップは見られず、たまに刈り棄てられた花が色あせて畑に散乱している光景が目にはいるだけだった。

それにしてもこの平野の散村は美しい。カイニョとよばれる屋敷林に囲まれた農家が、隣どおし一定の距離は保ちながら散在している。そしてそれぞれの家は黒々した瓦屋根が光り、白壁が美しい。
平野を走って、「散居村ミュージアム」という施設に寄ったときに買い求めた、「となみのチューリップを育てた人びと」という郷土資料館の冊子には、富山のチューリップ栽培の始まりをこう説明している。

大正七年に地元の水野豊造が、観賞用にチューリップの球根や牡丹の苗を購入し、たまたま切り花として販売したところ予想以上の高値で売れ、さらに、茎が枯れた後の球根が植えたときよりも立派に成長していることに気づき、球根販売を思い立った。そして水田の裏作として球根栽培を始めた。

チューリップはトルコが原産地で、江戸時代後期には観賞用として伝来していたようだが、本格栽培が始まったのは、これがはじめのことらしい。
地域を支える基幹的な産業が、個人的な発想から始まる例はいろいろあるのだが、富山のチューリップもその一つのようだ。

チューリップ風車もゴッホも遠い国

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