のどかさや日がな一日虫つるむ
気がつくと、庭に出て草取りをしている自分である。
草をとるといっても、鎌で刈るような大げさなものではなく、一ヶ所に腰を下ろしてぼんやりと目の前の小さな雑草の芽をむしる程度。ただぼんやりと春の日と風と匂いに浸っている。
だが、草の根元には虫が急にたくさん出てきた。
虫も花と同じで、暖かくなってきたこの時季に子孫を残そうと一斉に行動をはじめるのだろう。受粉する花は、きれいだ!ともてはやされるが交尾する虫をもてはやす人は、余りいない、虫愛ずる姫君くらいなものだ。しかも虫たちの交尾時間は長い。このヤスデは、私がコーヒーをいっぱい飲んで戻ってきても、まだやっている。
「そんなことしかやることがないのかね?」
と聞いたら、
「他に何か、やるべきこと、と言うものがあるのかね。あると言うなら、教えてくれよ」
と言われて、
「うーーーん」と考えてしまった。(もちろん夢の中で)
俳句の歳時記を見ると、「鳥交る」(とりさかる)、「鳥つるむ」、「鳥の恋」などの季語があるようだ。さかる、とか、つるむなどの言葉は、少し露骨な気もするが、「鳥の恋」などという一見、雅で隠微な表現よりも、俳句の直視精神には向いているかもしれない。
鳥にこういう季語があるのだから、虫にもあるのだろうか。
調べてみたがわからない。というよりなさそうなのだが、私が知らないだけかもしれない。
ともかく今日は、足下で虫がつるんでいる春の1日を、私ものんびり生きていた。