夏草:甲斐信枝さんを思いながら

夏艸や蒼蒼と営営と争えり
 
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堤防は夏のよそおいだ。
春の野草たちはすでに種を残して地上から姿を消し、眠りに入ってしまった。
そして、繁みは夏の草たちで日増しに賑やかになっている。
狭い場所で生き延びるために、何種類もの草たちが激しく争っているのが見える。これはひょっとすると人間の社会よりも厳しい争いなのかもしれない、そんな気がしてくる。
ふと甲斐信枝さんの雑草の絵本を思い出した。
 
甲斐さんの本は少ししかみたことが無いので、私がいろいろ言うのもおこがましいのだが・・・、
甲斐さんは雑草をテーマにしたものを多く描かれ、図書館にはいけばすぐ見つけられる。少し前に彼女の日常をレポートしたテレビ番組が放映されたのを楽しくみた。嵯峨野にお住まいのおばあちゃんだった。草原に出かけては地面に腰を下ろして、雑草をスケッチしている。草にむかって、子供に対するように声をかける姿は、達観された高僧のようにも思えた。 
彼女の本には、花の美しさだけではなくて、野草たちのきびしい戦い、生きる残る我慢と智慧、そうしてまで生きることの美しさが命の賛歌に結晶していて、ある種の崇高さのようなものを教えられる思いがする。
 
写真は、クズが我慢しながらもトゲトゲのノアザミに巻き付いているところ。みんな押し黙ったまま、相争って、上に上にと光を求めて伸びていく。私も甲斐さんの目をダブらせながらこんな野草たちを見ている。