ひとり来てひとり暮れゆく花野かな
静岡は、つい先だってまでの蒸し暑さが嘘のように、爽やかな涼しい空気に覆われてきた。
野原には多くの可憐な花たちが咲き始め、虫の声が途絶えることなく聞こえている。
野原を席巻しているのは、つる性の草たちだ。夏から秋にかけて、彼らは他の植物が十分に生長して硬くなったころを見計って、その茎を支えに這い上がり、それら草木の上に出て太陽の恵みをほしいままにする。狡智な戦略である。
花野で目にしたツル植物を3種。
花は群生して、遠目でも白く賑やかに見える。キンポウゲ科だから、毒がある。牛馬はこれを食べないという。よく似た花にボタンヅルがあるが、私は、葉がざらついているのをボタンヅル、すべすべしているのをセンニンソウと識別している。
ガガイモ (ガガイモ科)
毛だらけ肉厚のぼってりした花をまとめてつける。実は芋のような形をしていて、割れてなかから真白い羽毛をつけた種がたくさん飛び立つ。実の形から、名前がついたとも言われるようだ。
神話の小さい神、スクナヒコナは、この実の船に乗ってやってきたとかかれている。雑草だけれど、古来親密感を持たれていたのかもしれない。
ヘクソカズラ (アカネ科)
屁糞葛と書くが、私は鈍感なせいか、そんなに臭気や不快感を感じない。冬になると赤い実をつけたままツルが枯れているのは風情がある。赤といってももっと渋いベンガラ色に近いだろうか。
名をへくそかずらとぞいふ花盛り 虚子