行く春の野の花3句

今年は春があまりに早く行ってしまい、野も花もすでに夏の風情になってしまった。
俳句には春を惜しむ句がたくさんある。私は直ちに 「行く春を近江の人と惜しみけり」(芭蕉) を思い浮かべる。
しかし、一茶はそうした風雅・情緒に浸ることは少なかったようだ。
「一茶俳句集」(岩波文庫)の2千句から上五を調べても、「行く春」はたった2句しかない。

 行く春や我を見たをす古着買 (一茶)


解説には、「見たをすー安く値切り倒す」とある。貧しい一茶のこと、暖かくなってきたので冬の羽織でも売ろうとしたのだろうか。
一茶の生まれた奥信濃の柏原は豪雪地帯であり、4月まで雪が残り、遅い春の到来を待って梅とさくら、モモ、ナシ、リンゴがほとんど同時に花を咲かせ、そして、あっという間もなく夏になる。短い春はのたりのたりとたゆたう情緒を味わっている暇を与えない。
そんな郷土の気候が、一茶から「行く春」という季語を奪い取ったのだろうか。奥信濃生まれの私は、そんな憶測をしている。

以下自作駄句。


春菊や花をつければ食べずおく

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タンポポも人も惚け逝く掟かな
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酸いままにスイバ惚けるこれ面目
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