初夏のカタバミたち

むしってもむしっても酢漿(かたばみ)の花けなげ 
 
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カタバミの名は、片喰と書いて、4枚あるべき葉が3枚しかないことから、とも言われる)

句のごとく、実によく繁茂していくら取っても次から次へと生えてくるが、しかし不思議に悪意を感じない。黄色い花が健気なのとその葉を夕方には折りたたむしぐさに、つい可愛さを感じてしまうのかもしれない。
最近随分とカタバミの背が高い、と感じていたら「オッタチカタバミ(おっ立ちカタバミ)」という外来種が増えてきているという。私は、それと在来のものと区別をつけられないので、写真も在来のものと理解しておく。

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(アカカタバミ:全体に赤い。灼熱の乾燥した砂利や石垣などに生える。)

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ムラサキカタバミ南アメリカ原産、江戸末期に鑑賞目的で日本に持ち込まれた。)

ムラサキカタバミは、きれいな花だと思ったら敵の術中にはまり、増えに増えて対処できなくなる。鱗茎と呼ぶ根にある球で爆発的に増える。そのため次第に憎らしくなる花である。

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カタバミを、メンメノカンショと呼んだ幼いころのかすかな記憶がある。柳田国男にも、宇都宮貞子さんにも、メンメノカンショという呼び名は記録されていない。

 メンメノカンショ
 よったかよらねか
 あばしょんしょ
 
大正時代に奥信濃に生まれ育った今は亡き母が、記憶の引き出しにしまいこんでいた、子供の遊び歌らしい。話をしていたら、こんなものが不意に出てくた。人の記憶は不思議なものだ。
 
「よったか、よらねか」は意味不明。
「あばしょんしょ」は、別れの際の「ばいばい」の意味らしい。
何だか大正時代の田舎の和服の子供らが、庭先で遊んでいる姿が脳裏に浮かんできそうだ。ここでいう「メンメノカンショ」は、カタバミのことだ。私にもこう呼んだ記憶がある。
 
メンメは小さい可愛いことか。それともヤギのことか?
カタバミは漢字で「酸漿」なので、サンショウがカンショになったのか。
柳田國男の「野草雑記」の「草の名と子供」には、越後ではスズメノサンショウ・スズメノカンショウという名前が紹介されているから、多分サンがカンになったのだろう。ともあれ、可愛いらしい呼び名だ。
他に「スズメノスイコ」とも呼んだ。かすかな酸味があるので、小さい葉を噛んでその本当に微かな味を楽しんだものだ。
 
カタバミには「カタバミ」と「アカカタバミ」の2種があるが、私は、赤く焼けたものもあるという程の理解で、この2種を区別して意識はしていなかった。でも、当時の子供らは、遊びの中で事物を観察し、身近な知識を仕入れていた。だから、この葉が、夕方には半分にたたまれて眠ることは誰もが知っていた。
 
そうすると、「よったか?よらねか?」は、夕方、カタバミの葉がたたまれたか、まだたたまれていないか、たたまれる時刻になったら「あばしょんしょ」・・・さよならしようよ、という意味にも思えてくる。いかが?