幽霊みたりギンリョウソウ (ツツジ科?)

廃寺への道暗くして銀龍草

 

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最近、自粛の暇を持てあまして、駿河七観音をテーマに山道を歩いている。物好きな友人がいてくれるのも、励みになっている。

そんな山歩きで先日、ギンリョウソウにお目にかかった。時期が良かったのか、その後も何度も見ることができた。

ギンリョウソウは、白いので一見してだれでもわかる。白というより薄く透きとおった感じがする。立っているのは花茎。やや下向きにうな垂れた首が花であり、その様子から幽霊茸という名でも呼ばれているという。葉は退化して鱗片状になって茎に多数つくが、すべて白色である。花期は5~8月。たいてい日影の木下などに数本かたまって立ち上がっている。

 

葉緑素がなく、一体どうやって生きていけるのか。

私のもっている図鑑*1は「落葉などを養分に育つ腐生植物である。」とかいていある。ただしまだ謎の多い幽霊のようで、その正体がはっきりしていないようだ。べつの本を見ると、「腐生とは生物の死体や生産物を分解し、栄養を吸収する生活法だが、」「実はギンリョウソウ自身による分解者としての働きはない」

ではどうなるのかというと、ギンリョウソウの「根は、菌類(カビやキノコの仲間)が共生する菌根という特殊なもの」で、「菌糸を誘い込み消化して栄養を奪うという、私たちがもつ植物のイメージとかけはなれた奇怪な栄養法である」*2という報告もある。

 

この時季、新型コロナでウイルスに過敏になっているので、こうした微生物の細胞レベルの生理が実に生々しく感じられてしまうのは、私だけではないだろう。人も植物も微生物と伐っても切れない縁でつながっているということだ。

 

花にはちゃんと雄しべと雌しべがあって、自家受粉したり他花受粉したりして種子を作る。蜂などはほとんど来ないというが、トラマルハナバチが来るのを田中肇氏が発見した、とも記載されている。*2 うな垂れた花の奥には袋状になっていて、そこに蜜が溜まる仕組みになっているという。この姿からは想像ができない。

また、諸説あるがギンリョウソウはツツジ科だと書かれている。なるほどツツジ科の馬酔木に花の形が似ていなくもない。

それにしてもなぜこうした進化をしてきたのだろう。こうまでして引き籠る理由があったのだろうか。生存のためにこれが有利なのだろうか。それとも進化のいたずらな実験なのか。

 

*1「夏の植物」永田芳男 山渓フィールドブックス)

*2 「ギンリョウソウ」森田竜義 『Newton 世界の植物第2号』 132p