富士山のまぼろしの滝へ(付 伊奈神社)

雪解富士 山気降りくる沢の陰

(左下に向けて沢を水が落ちるとのこと:写真は河床だけ)

富士山の雪解け水が流れ下り、滝が出現する。5月頃の一時に現れる現象で、人呼んでまぼろしの滝」。友人の誘いにのって出かけてみた。

場所は須走登山口(静岡県小山町須走)から、約20分のところ。須走五合目は標高およそ2000mで、付近のカラマツはまだ葉を出し始めたばかり。ヤマザクラや濃い紫のツツジが咲いている。

天気は上々で御殿場市街地や山中湖が眼下に広がる光景には胸がすく。対峙して見えているのは金時山だろうか。富士山頂は雲が多かったが、時おりさっと霧が流れると、真っ白な頂が顔を出す。残雪の白さが5月の光の中でまばゆいばかりだ。

 

このところ腰痛から右脚のしびれや痛みに悩まされてきた自分にとっては、富士山の20分歩きは、自信が持てなかった。幸いコースは等高線を横に移動するような感じで、厳しい登りもなく、足腰は大丈夫だった。高齢のおばさんたちでも大丈夫なコースなのだ。

 

というところまではいいのだが、肝心の滝はというと・・・無かった

雪解け水が少ないので、途中で地下に浸み込んでしまい、流れてこないのだ。沢は数十mの断崖となり、大きくえぐれて、水が流れたらさぞかし、と思わせる。

この日は小さい水たまりがある程度で、磨かれたような底石がきれいに見えている。先日結構な雨があったので希望が持てたのだが、期待は外れた。観光客も次々に登ってくるが、到着してのぞき込み、みなさん残念がっている。

しかし、家籠りの生活とは別世界の展望が楽しめて、これはこれで十分満足したのだった。

 

下山して、須走地区にある浅間神社伊奈神社を訪ねた。浅間神社世界遺産の一部であり、富士講の碑が林立していて興味深い。

伊奈忠順の像と左端に神社 小山町須走地区)

また、伊奈神社は宝永の噴火で大被害をうけたこの地域を救うため尽力した、関東郡代であった伊奈忠順(ただのぶ)を祀ったもの。須走は降灰が3mに及んだともいわれている。彼は復旧工事を推し進めただけでなく、命を懸けて、駿府米蔵から無断でコメを運び出し、この地の窮民に与えた、とも伝えられている。それがために処罰されている。

神社は実にきれいに整備され、今なお篤く敬われていることが良くわかった。富士山の噴火が話題になるこのごろ、この逸話がもっと知られてもよいだろう。後日また記すことにしたい。