といっても、さっと茹でて、ゴマ和えにしただけのことである。少しの苦味がやっぱり春らしい。お酒も昼から一杯いただくことになる。
悪食の毛虫となりて春を食う
ところが、かつてはひろく食用にされていたようで、べつに悪食などではないようだ。
「道端植物園」には、江戸時代はタンポポが今のように野に一面というような光景はなく、園芸また野菜として利用されていたらしいと記されている。また、苦菜(にがな)、薬菜(くしな)という呼び名もあったようだ。
宇都宮貞子さんは、「春の草木」に、北信濃ではタンポポを「クジナ」とよんでいて、
「節句の前にクジナ食べれば一年中病まね(病まない)」
という人々の話を載せている。
白洲正子さんも「草づくし」に、戦時中はタンポポが貴重な食料だったといって、今でもほうれん草や三つ葉に混ぜて食べると書いている。
なるほどね。かつて私は、イタリア料理店で出されたタンポポのサラダに驚いたが、少し知識が足りなかったようだ。
参考 「道端植物園」 大場秀章 平凡社新書
「春の草木」 宇都宮貞子 新潮文庫
「草づくし」 白洲正子 新潮社(とんぼの本)
「野の民俗」 中田幸平 社会思想社