娘の赤い唇またはフシグロセンノウ

仙翁花(センノウ)や褪せて蜘蛛の巣かかるまま
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フシグロセンノウ
宇都宮貞子さんをまた引用させてもらうが、「夏の草木」に長野県の鬼無里のNさんの台詞がでてくる。

ナデシコのでかいような形で、その赤させったら、よくよく十五、六の娘の唇(くち)のようでごわすど」

庭のフシグロセンノウの朱が開くたびに、私はこの台詞を鮮やかに思い出す。この花を表す言葉はこれにきわまる思いがする。ただし、宇都宮さんはこの花を立秋のころの花ととらえている。でも我が家では初夏の花である。土地柄の違いもあろうがずいぶんと季節が違う。気候が早まっているとしか思えない。

同じころ我が家では、孔雀サボテンもたくさん花をつける。月下美人が夜咲くのに対して、これは真昼に咲いている。今年は10ほど花を次々につけ、花は二日ほどもつ。花びらの開きかたを孔雀に例えたのだろうが、こちらの赤は、青が微妙に混入していて、また不思議な色である。こちらのほうは、もっと成熟した二十代後半の娘さんの唇のイメージだといえるかも。
いずれも既に褪せて散り、「花の色はうつりにけり」。
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孔雀サボテン