カラスウリ「たまご」と言いて小さき掌
この時期、裏山を歩くと藪にカラスウリが見つかって楽しい。その赤といい、その丸い形といいいかにも何かを訴えているようだ。たぶん種の拡散のため鳥に啄んでほしいのだろう。
人間様もついつい枝を引いて取り、しばらくは壁などにつるしてから庭に捨てるので、その願いを手伝っているのかもしれない。
それにしても、花と実のアンバランスはどうしたことか。
花は、初夏の夜の暗闇の中に、妖しいレース編みのような白い花弁を開く。一夜花なので朝にはもうしぼんでいて人が目にすることは少ない。そんな秘密めいた生殖をしたのに、実はあからさまな顕わし方である。どういう理由があるのだろう。
夜に妖しい花を開くのは、おそらく受粉の競争者が少ない時間帯を狙い、夜の蛾をターゲットに特化した戦略だろう。白いレースの様な形状は、できるだけ花を大き見せることができ、しかも普通の花弁ではなく糸編み状にすることでエネルギー効率が良いという利点がありそうだ。
逆に朱赤に目立つ実は、果物のような印象を与えて動物たちの目を引き付ける。
とすると、このカラスウリ、なかなかの戦略家だと思えてくる。