ツバナの飛行場から

出立や茅花(つばな)偃(のえふ)す飛行場

 

新緑に誘われて、車を走らせているうちに「富士山静岡空港」に行きついた。ここは全国有数の茶の産地、牧之原の台地で、一面の茶畑が広がっている。茶の芽はまだ伸び始めたばかりで、茶摘みまでにはもう少し必要だが、五月のような風が吹いて、本当に爽やか。日常のいろんなことを忘れることができる。

 

田舎空港で発着便は少ないが、最近ようやく韓国便が再開された。ここからは丘珠、新千歳、福岡、熊本、鹿児島、出雲、那覇そして仁川が出ている。

折よくFDAの離発着を見ることができた。FDAは70から80数人という小型ジェットを運航していて、機体のカラーが色々で美しく春らしくていい。今日はピンクのものとゴールド。遠くには富士山が霞んでいる。展望台には、マニアの方々だろう、20人ほど大きな望遠レンズのカメラを手に、盛んに飛行機の話をしている。陽ざしが温かい。

私もユーチューブで流されている飛行場のライブカメラを、ただずっと見ていることがある。飛行機はそれ自体で美しくロマンがある。

飛行場の草地には、チガヤが伸びていて、花穂が銀色に風になびいていて美しい。次のフライトまで30分。うとうとしながら作句。

 

「偃(のえふ)す」(のえふす)という珍しい訓を使いたいばっかりに、この句を作った。普通は「ふす」くらいの読みらしい。

のえふす、とは広辞苑には、①ひれふす。平伏する。ぬえふす。のいふす。②降伏する。と出ている。漢語林の「堰」には、「匽は、区切られた、かこいのなかでやすらぐの意味。ひとがふせる、やすむの意味を表す。」と書かれている。「のえふす」の言葉は出ていない。

「のえ」って何だろう。思い付きであるが「のえ」はもしかしたら元は「ぬえ」で萎えるの「なゆ」が本元かもしれない。明解古語辞典には「ぬえくさ 萎草」が、なよなよとした草、しなやかな草。と載っているから、そんな発想も許されるかも。素人判断で。