セイダカアワダチソウの昨今(キク科)

泡立草美し 瑞穂のど真ん中

セイダカアワダチソウの黄色い風景は、もう見慣れてしまって驚くこともなくなった。むしろこれが無かったら秋の風景が寂しいとさえ思われる。それはセイダカアワダチソウが、爆発的に繁茂した頃と比べて幾分数が減り、風景全体で見てもバランスが取れているからのように私には思える。

これが急速に拡がったころ、日本の野原は全部占領されてしまうんじゃないかと、みんなが心配した。アメリカ占領軍とかアメリカの物質文化と何かにダブって感じられもした。アレロパシーというほかの植物を殺してしまう物質を出している、という情報も、和を重んじる日本人にとってはいかにも異質で不気味に感じられたものだった。

 

先日近くの沼地を散歩すると、盛りを過ぎたセイダカアワダチソウが覆いかぶさるように茂っている。そして小さい羽虫たちが意外にたくさん集まってきている。

もう少ししてこれが枯れてくると、花は白い綿のようにふわふわになり、泡が立つ姿を見せる。そうして木枯らしが吹きはじめると吹雪のように激しく舞い上がり、草や木の枝や道路の縁石などあちこちに引っかかって溜まってまるで残雪のようにみえる。時をあわせてヨシやススキやガマの穂綿が舞ってくる。海ではサンゴやフグの大産卵が報道されるが、同様にこの時季の沼では植物の種が穂綿にのって大量に風に放たれる。いずれも命の祭り、大拡散だ。散歩するときは、眼に入らぬよう、息をして喉に入らぬよう気を使わないといけないほどだ。



一時アレルギーの原因などと悪者扱いされたが、それは誤解で真犯人はブタクサだった。またアレロパシー「その物質がだんだん土の中にたまって来て、今度は自分にも害になってきた。だから、セイダカアワダチソウは一時のピークを過ぎて減ってきた」と言われているらしい。(田中修 「雑草の話」中公新書ただしこの本も2007年発行なので現在はどうなのか分からない。そしてアレロパシー物質を出すのはセイダカアワダチソウの特権でもなんでもなく、多くの植物は多かれ少なかれそうした物質を出しているのだという。コロナのパンデミックと同じでしっかり敵の正体を見て正しく恐れなければならないようだ。

(まるで日本画のようだ)

ススキやヨシなどと対抗して激しい生存競争をしてきたアワダチソウだが、いま周りの風景をみると、そう極端な分布とはなっていない感じがする。今はお互いにうまく調整しているようにみえる。それはしばし美しくさえある。

ガザやウクライナを考えると、植物は人間よりも上手に住み分ける能力があるのかもしれない、と思えてくる。