風景の中へ

あんずの里(風景の中へ36)

ミツバチとあんずの里を右往左往 4月3日、あんずの里を訪ねた。長野県千曲市のしなの鉄道屋代駅から東に入った山裾の集落一帯である。 ここも予ねてから、一度はと思いつつなかなか見れなかったところである。 前日の情報で、「アンズが開花した」と聞いた…

もくれんと木喰仏(風景の中へ35)

微笑仏の頬もくれんの花開く 藤枝市岡部町を走っていたら、十輪寺:モクレンの寺、という看板が出ていたのでついつい誘われ寄ってみると、境内をはじめ全山400本というモクレンが、文字通りいまを盛りと咲きほころんでいて、じつに壮観だった。これほどの…

カンボジアの蟻の巣(風景の中へ34)

密林に寺は沈みぬ蟻の塔 これで高さ1m弱 「人莫躓於山而躓於垤」 読めもしない漢文を貼り付けたが、「ひと山に躓かずして垤(てつ)に躓く」と読み、大きな山につまずくことはないが、小さなアリ塚にはつまずいてしまう、小さなことに油断して失敗すること…

雪の結晶(風景の中へ33)

風花やひとひら記憶のジグソーパズル 大寒波の襲来で、北国は一日で1mを越す大雪になっている。わたしの住む暖かい駿河でも雪雲が終日空を蔽い、わずかだが雪片が舞ってきた。 風花。ひらひらと数片のエフェメラル。 江戸時代天保6年(1835)に、新潟県魚沼…

「雪国のスズメ」(風景の中へ32)

寒雀軒端に朝の光あり (軒端じゃないが・・・) 先日「冬ツバメ」、そして「ちいさいおうち」のことを書いたら、「雪国のスズメ」のことも書きたくなった。 鳥好きの小学校の先生佐野昌男さんが、雪の多い厳しい環境の隔絶した集落を選んで、そこのスズメに…

真白な富士の高嶺(風景の中へ31)

富士真っ白極東の空に惜しげなく (富士川から:手前が東名、その右に新東名が見える) いつも見ているはずだが、今日はあんまりにも真っ白なので、ついつい賛嘆の声が出る。富士の裾野、富士川楽市楽座近くからのショット。富士の神はコノハナサクヤヒメと…

絵本「ちいさいおうち」とツバメ(風景の中へ30)

冬のツバメのことを書いたが、ついでに、ツバメの絵で以前から気になっていることがある。 「ちいさいおうち」という岩波から出ている絵本の表紙絵のことだが、我が家の古ぼけた版では、ツバメが3羽飛んでいる。これが英語版や日本語の大型版では、ツバメは…

冬のツバメ(風景の中へ29)

河原翔ぶ一群親子か冬ツバメ (ツバメが左上空に星粒のように撮れている:要拡大) 急に寒波が襲ってきた一日、いつものように河原で民謡「新相馬節」の自主トレ。出だしのハアーアーがうまくいかず、いつも師匠に注意される。 ハアーあー、とやっていると上…

甲斐の奇橋「猿橋」(シリ-ズ風景の中へ28)

猿橋は見上げるがよし散紅葉 山梨県大月市に猿橋という変わった橋があり国の名勝に指定されている。 長さは30mほどの木の橋だが、谷底が見えないほど深く、橋脚は立てられないため、めずらしい構造をしている。両岸から空中にせり出す刎ね木を4,5層重ね、…

雲白く遊子悲しむ(シリ-ズ風景の中へ27)

千曲川をテーマに水彩画を描こうと思って、上流から下流まで折に触れて歩いてみることとした。今回は川上村から小諸の付近まで川に沿いつつ車を走らせた。 確か小諸の懐古園から千曲川を望めたはずだと思い、城跡の展望に行って見渡すと、河岸段丘の崖の下を…

秋の古代廬原(いほはら)国:三池平古墳(シリ-ズ風景の中へ26)

秋の1日、旧清水市の公民館の考古学講座に参加して庵原国(いほはらのくに)の古墳をみてまわった。講師はこの地域の発掘に長いこと携わってこられたS先生で、個々の古墳の出土状況や発掘の裏事情まで知悉されておられ、話に興味は尽きない。 今回は、旧清水…

かんなみ仏の里(シリ-ズ風景の中へ25)

「仏の里美術館」が伊豆半島の付け根、箱根の麓にあたる函南町桑原に、2年前にオープンしている。秋の1日、仏像鑑賞を楽しんだ。奥まった山里に、美術館はお堂を模した清楚な建築で、仏像の館に相応しい静けさを漂わせていた。 収蔵されている仏像たちは、驚…

装飾古墳の郷から(シリ-ズ風景の中へ24)

狗尾草(エノコロ)は匿うつもりか円古墳 (山鹿町:オブサン古墳 西南戦争の弾跡が石室の石に残されている。 よく手入れされていて感心する。) 引き続き、熊本県の八女、菊池あたりを歩いている。 大和王権の新羅征討を妨害した筑紫の国造、磐井は1年半の抗…

反骨の石人・石馬(シリーズ風景の中へ23)

囀りて石人めがけ雲雀落つ 江田船山古墳の近くのモニュメント石人 九州はまた、反中央の国だ。 以前「鹿児島神宮」で触れたことがあるが、司馬遼太郎が薩摩の国ことを日本国(中央政権)に5度反乱を挑んだ稀有の国、と書いていた。隼人の反乱から始まり5回…

石仏の千年(シリーズ風景の中へ22)

石橋や城砦や石像をみると、つくづく九州は石の文化だなと思う。 彫ったり削ったり積み上げたりと様々に加工されるが、自然岩石のもつ堅牢さ、ある程度以上には変えようもないその風合いの頑迷さというか、原初性とでもいうものが見る人の心を捉える。それが…

落人伝説椎葉村で離合困難?(シリーズ風景の中へ20)

椎葉村と言えば、山奥、平家の落人、稗つき節、柳田國男。漠然とこんな知識しかなかったが、以前ちょっと話題になった89歳の女性作家の「見残しの塔」を読んで、ふと行ってみようと思い立った。室町時代に山口の瑠璃光寺の塔を建設した宮大工の話で、主人公は…

巨大石橋の美しさ(シリーズ風景の中へ19)

熊本県で巨大な石橋、霊台橋と通潤橋を見た。 見上げると空の上に石が並んでいる。なぜ石が空中に並んでいて落ちてこないのかと素朴な不思議にうたれる。 いずれも日本最大級、江戸末期の建設である。両方とも緑川に架けられたもので、このあたり川は渓とな…

石の橋がひっそり(シリーズ風景の中へ18)

熊本県宇城市からあこがれの通潤橋をめざして218号を走っていると、ヒョイと左手下に石橋が見えた。ユーターンして坂道を下ると、そこにあったのは「山崎橋」という石橋。建設が天保2年(1831年)、長さ25mという看板が出ている。もうじき200年になろうとしてい…

天主堂の落日(シリーズ風景の中へ17)

長崎から車を走らせて、諫早、島原城、雲仙火砕流公園、島原の乱激戦地原城址。 島鉄フェリーで口之津から鬼池にわたり、走っていると天草四郎と天主堂、キリシタン文化の香りが漂う。 ロザリオライン途中で日が暮れる。有明道の駅に併設の温泉に入り、今日…

3重連水車休眠中(シリーズ風景の中へ16)

5月下旬、大分県日田から筑後川沿いに久留米方面へ向かうに、高速でなく一般道を走った。それは朝倉にある大きな3重連や2重連水車を見たかったからである。実は30年ほど前に九州を旅したときに、ここに寄ってその迫力に魅了されたことがあった。あの感…

名もかなし艸千里浜(シリーズ風景の中へ15)

30年ほど前に、「われ嘗(かつ)てこの国を旅せしことあり」。 そのとき阿蘇の火口まで行ったのだが、雨と霧で何も見えなかった。 以来、火口や草千里ガ浜を見たいとずっと思っていて、やっと今回は願成就。 草千里といえば、三好達治。 若き日の我の希望(の…

空に咲くキリシマツツジ(シリーズ風景の中へ14)

5月から6月にかけ、マイカーで20日ほど九州をぶらぶらと走った。 九州の中央部、阿蘇山、高千穂町を経て、五ヶ瀬町、椎葉村へと、すれ違いの出来ない山間国道などを選択したくせに、文気を言いながら走りへとへとになった。 霧島では早朝霧島神宮に詣でたあ…