風景の中へ

黄泉への入り口?を訪ねる

夕焼けや黄泉比良坂(よもつひらさか)逃げ降りよ (猪目の洞窟・・・夢に見ると必ず死ぬ) グロテスクの語源となった「グロッタ」は洞窟のことであり、ルネッサンス以降、庭園づくりの要素として人工の洞窟が盛んにしつらえられたらしい。グロッタにも、冥界…

山陰の山岳聖地: 国宝三徳山投入堂

万緑の雲見おろすや投入堂 国宝の投入堂をみにいった。 お堂は三朝町の山奥、標高520mの切り立った崖に建てられていて、下は目もくらむ千丈の谷である。足場もないのに一体どうやって建設したのか?役行者が呪術でもって投げ込んだという話が生まれるのも無…

明石の「五色塚古墳」へ

陵や茅花流して瀬戸の風(みささぎやつばなながしてせとのかぜ) 五色塚古墳は、淡路島を望む台地の上に築かれた全長194mの前方後円墳で、淡路大橋のすぐたもとに位置する。日本書紀にも出てくるので、かねて行ってみたいと思っていた。 大きさでは全国40位…

夏草:甲斐信枝さんを思いながら

夏艸や蒼蒼と営営と争えり 堤防は夏のよそおいだ。 春の野草たちはすでに種を残して地上から姿を消し、眠りに入ってしまった。 そして、繁みは夏の草たちで日増しに賑やかになっている。 狭い場所で生き延びるために、何種類もの草たちが激しく争っているの…

名勝 「姨捨の棚田」で一句

姨捨や一枚植えては立ち話 「田毎の月」で有名な歌枕、姨捨の棚田を帰郷のおりに寄った。 気にしていながら、なかなか行けない所があるものだが、ここも私にとってその一つ。信州では棚田など珍しくもないし、むしろ棚田のほうが普通なのでそれほど興味をそ…

富士山を背景にして藤

フジの香や蜂ときそいて花に鼻 富士宮市の「下の坊」は知る人ぞ知る藤の名所だという。下の坊という名は、大石寺を上の御坊とよんだのに対し、この寺を下の御坊とよんだことに由来するようだ。熱心な花の愛好家である友人に勧められて連休の一日を花見に出か…

村里のサクラを見に

千年のさくら百本の支柱 (本郷の千年桜) 国道52号、いわゆる身延街道筋にある桜を見に出かけた。 身延山の久遠寺のしだれ桜は余りにも有名だが、メジャーでないほうがのんびり花を楽しめると思い、向かったのは、山梨県南部町の「本郷の千年桜」と「原間…

戦争遺産「掩体」を土佐に訪ねる

戦争は燃えさしのまま南風(まぜ)強し 「白菊」の枯れて戻らず土佐の空 (「白菊」は海軍の練習用飛行機の名) 掩体(えんたい)とは、戦時中の戦闘機の格納庫のこと。 20年ほど前に目にした奇妙な光景が忘れられなくて、高知県南国市の海岸近くに向かった…

讃岐富士にのぼりました

秋深み野火の烟りのたなびきてのどかにおわす讃岐の富士は (丸亀城からみた讃岐富士) 四国に足を踏み入れるたびに、この山のもつ独特なのどけさに迎えられ、私はいつしかこの姿を見るのを喜びとしていたようだ。車窓にあっても目はいつもこの山の姿を探し…

放棄地の草紅葉

放棄地や原野に還る草紅葉 わたしの住まいの近くは、古くは一面の沼地が広がり、稲作にも適さない低湿地で、レンコンなどしかできなかったようだ。圃場の整備が進んで、これが立派な水田になり、瑞穂の国らしい風景になったのだが、それは束の間だった。徐々…

富士の高嶺に雪は降りける

里人も息のむ富士のしろさかな (赤人の歌碑 間にうっすらと富士山) 今年2016年の富士山の初冠雪は、10月26日で例年より26日遅くなり、実に60年ぶりの遅さだったとのこと。ただし私は静岡側から9月の末に初雪を見たのだが、このときは甲府気象台での確認が…

今度はルノワールのヌード像

ブロンズの裸婦のおいどや冷えきって (「勝利のヴィーナス」 後姿のほうがいい) さて、釧路の幣舞橋で4体の裸婦像を観察してきたので、勢いづいてJR静岡駅南口、バス乗り場に建っている裸婦像を観察に行った。「勝利のヴィーナス」(上)と「洗濯する女…

手塚治虫的「硅素系の生物」ヌード

黒光も守衛も逝きぬ裸婦秋思 ヌード彫刻から、手塚治虫のある漫画を思い出した。記憶を手がかりにネットで探すと「サンダーマスク」というタイトルだった。99%省略して最後の一こま。 宇宙からきた硅素系の生物が美少女に取り付き、彼女は石のような硅素…

裸像妄想(釧路の幣舞橋にて)

幣舞に女像四人の裸足冷ゆ (ぬさまいにおんなよにんのすあしひゆ) (「春」 舟越保武 背後はフィッシャーマンズワーフ) 釧路市は人口17万人を超す道東の中心都市で、幣舞橋は市の観光スポットの一つとなっている。橋は釧路川の河口近くに架かっていて、周…

霧多布湿原でカヌー遊び

湿原に鶴を飛ばせてカヌー漕ぐ 霧多布湿原を流れる琵琶瀬川をカヌーで下った。コースは約2キロ1時間程度である。1艘に2,3人が乗って、パドルは1人1本。ゆっくりと息を合わせて漕いでいく。 天気は快晴、風も心地よい。空の青が水の深い藍に溶け込む…

コンブ漁を初めてみました

昆布干して鼈甲色の邨(むら)の朝 (干しているうちに色が微妙に変わる) 北海道の道東にある浜中町は昆布の生産量が日本一だという。その町の霧多布の浜でコンブ干しを見てきた。ちょうど台風が過ぎ去ったあとの爽やかな朝だった。以下、垣間見た昆布干し…

両面宿儺(リョウメンスクナ)-2

遠雷や飛騨の宿儺(すくな)は顔二つ それにしても、両面で4本の手足とはどんな人だったのか。 と思っていたら、先日テレビでアビーとフリトニーの姉妹の報道を眼にした。アメリカに実在している姉妹で首から下が癒着している奇形である。ベトナムのベトち…

両面宿儺(りょうめんすくな)-1

行く春も睡りしままの仏かな (千光寺円空仏寺宝館) 両面宿儺の像をみに高山の千光寺を訪ねた。円空の傑作のひとつである。寺は高山市街から10キロほどの山の中。円空が和尚と気があって長らく滞在した寺だという。 像は高さ1mに欠けるくらいだろうか。鉈…

円空さんのおびんずる

畑を打つ手垢に輝(ひか)るやお鬢頭盧(おびんずる) 円空仏を高山の千光寺に訪ねた。千光寺は円空ゆかりの寺である。 入館料500円を払って寺宝館に入ると、写真も駄目だとのこと。岐阜羽島の中観音堂とはえらい違いだと思いながら、それでもお目当ての「両…

飛騨に臥龍桜を観る

遅桜散って静かな里となる 飛騨の国の一之宮に詣でると、JR高山線飛騨一之宮駅と宮川を挟んで神社に対峙するように臥龍サクラがあった。もう散り桜だったが、それなり銘木といわれる力をかんじた。 樹齢約1100年になるエドヒガンザクラであるとのこと。国の…

元寇防塁と碇石・・・元寇の痕跡

蒙古船底に眠らせ冬の湾 (元寇防塁) 元寇の遺跡である「元寇防塁」と「碇石」をみにいった。 元寇防塁は、福岡市今津から香椎までの海岸線に約20kmの間を、高さ2m幅2mの石の塀を築いたもので、大半は破損したり埋没しているという。幕府は九州の御家人や荘…

水城…古代の中韓との戦の跡(1)

訪ね来て筑紫古代や梅つぼみ 水城の址 道路により寸断されているが、左奥の山裾まで延長している 筑紫の国とか博多福岡というと、否応なしに大陸・朝鮮半島を意識する。博多では隣の席の普通の女の子が韓国語で話をしている。テレビでもpm2.5の予報が流され…

金印のロマン

一筋の道凍て遠き志賀島 市博物館パンフレット 教科書でおなじみの「金印」を、その実物を拝もうと、開館と同時に福岡市博物館にはいった。真っ先にケースを覗き込むと・・・、 やっぱり意外に小さい。しかし妖しいしっとりしたような黄金の輝きだ。傍に実際…

山頭火の住んだ町(新山口)

其中庵どうしようもない隙間風 其中庵(ごちゅうあん)は、山頭火が50歳から56歳の間住んだ庵である。平成4年に立派に再建されたが、もともと住み捨てた古い農家であったようだ。結庵の翌年、萩原井泉水がここを訪れている。新山口駅から徒歩15分であるが意…

山頭火の住んだ町(防府)

冬の夜はいくぶん賢治で山頭火で 防府は山頭火の生誕の地である。 生家址を訪ねると、変哲のない鄙びた下町の一角に東屋風に整備された場所があり、その真中に立派な碑が置かれていた。生家は大地主だということなので、その周辺一体が地所だったのかもしれ…

富士の裾野の枯れススキ

しばらくは富士を遮りすすき原 ススキを見るには、もう遅すぎることは分っていたが、それでもと思い脚を伸ばした。 富士山の裾野、裾野市十里木。富士山と愛鷹山(あしたかやま)の間に広がる高原である。近くには富士サファリパークなどの観光施設や分譲別…

日本一の陽石

陽根は穣りの神なりありがたや へんてこなものを、役場に聞いたりしながら、やっと探し当てて拝見してきた。 まず、長野県佐久穂町の教育委員会の看板をそのまま記しておこう。。 ・・・・ 北沢川の大石棒 今から4千数百年前 (縄文時代中期) 眼前に広がる南…

千曲川源流をたどる

秋の嶺大河の源(もと)を極めけり 写真中央が水源地の標。左奥に水源の沢がある。 水は透明で見えないが、中央部から湧き出ている。 この連休に友人と、千曲川の源流を辿って水源地点まで登った。高原野菜で有名な長野県の川上村から入り(最近では宇宙飛行…

木喰さんの笑い

木喰は笑いなされて堂の秋 秋がそうさせるのか、このごろ木喰さんの笑顔が思い出されてならない。 特に、3年前越後の柏崎十王堂で会った、写真のおびんずるさんが心から離れない。 木喰さんを微笑仏とも言うようだが、これは満面の笑みである。恐らくこの笑…

棚田・・・美しい執念

奥山の田の小ささよ早苗鳥 久留米木の棚田 会社ぐるみのボランティア草刈 ふと、棚田を見にいこうとおもった。「日本棚田100選」を参考に静岡県遠江の山奥、旧引佐町の久留米木の棚田と旧天竜市の大栗安の棚田を探して出かけた。 遠州の奥山は、実に山が深い…