柿一つ

一村は次郎ばかりや柿の里 我が家の次郎柿は毎年2,30個は実をつけるのだが、今年は裏年らしくて、何と一つも実がつかない。まさか、と思って矯めつ眇めつ覗き込んでみたのだが、やはり無いのだ。こんなことはこの10年なかったことだ。 「今年は駄目だね…

草の花 

雑草も今朝は秋草庭一面 庭の植物は今年の異常な暑さには参ったようで、いろんな優しい花は溶けてしまっている。雑草たちは、手入れをされないので伸び放題。雑草なのだが、この季節になると、やさしい慎ましい花をつけ、愛しさが増すので、「雑草」から「秋…

弱者の避暑

下流民きょうも避暑ですモール街 (モールのベンチ――たまたま人のいない瞬間) 暑い!とばかり言っているが、それにしても暑い。7月から始まった35度前後の暑さが、まだ9月半ばまで続くという。 前にも書いたが、これはもう災害なので、避暑避難を公共で…

炎天の浜を歩く

炎天や漁船も雲もただ白し あんまりにも暑いので、意地になって、海を見にいった。 焼津の石津浜である。近くには小川漁港がある。 この付近の浜は小泉八雲が夏になると家族を連れて遊びに来ていた場所で、「乙吉だるま」という短編も残している。浜は松林の…

蓮見には暑すぎて

白蓮も悟りて散るやしどけなく 近くの沼に蓮がたくさん咲いている。 早朝に見に行こうと考えていたら、今日ももう10時を回ってしまった。気温もどんどん上がり30度に近い。ハスの花見は朝早くというのが相場であり、午後になると花は閉じ、数日開閉を繰り返…

ディズニーのドローンショーを見る

遠花火見飽きたころや襟に風 静岡市の安倍川花火大会が、3年ぶりに開催された。(7月22日) コロナ禍でしばらく開催ができていなかったので、正直忘れてしまっていたのだが、友人が「今日は花火だ」と言うのではたと思いだし、夜出かけることにした。 と…

夏の小國神社と草花

涼しさや杉の参道進むとき 連日33度続き、熱帯夜、夕立も降らないこの異常な暑さの中、遠州森町の小国神社に詣でた。あそこなら涼しいかなと思ったからなのだが、結果、実に涼しかった。 土曜日とあってか、駐車場もほぼいっぱい、門前の茶や横丁も混んでい…

牧野富太郎展 または菫(スミレ)はセロリ

来世はエノコログサでも良しとせん (博士の東大助手の頃 明治33年:本と標本の山) NHKテレビの連続ドラマで、牧野富太郎博士がテーマになっている。これにちなんで、かどうか知らないが、静岡県立の「ふじのくに地球環境史ミュージアム」で牧野博士の企…

蛙2 (大ガエルの大群)

蝦蟇という傍若無人皮の中 (ウシガエルの骨格標本 : 静岡県立 ふじのくに地球環境史ミュージアム) ある家を訪れたとき、「ガマが棲みついている」と言われ、まさかと思っていたら、のっそのっそと這い出してきて、びっくりした。 我が物顔で歩いて人間な…

熱中症の避難所がほしい

溽溽の字も溽き溽暑かな (じょくじょくのじもむしあつきじょくしょかな) (気象庁のデータ) ひどい雨の一方で、ひどい高温だ。 気象庁は「熱中症」についても警報や注意報を出している。これは数値化されていて、気温、湿度、輻射熱から算出するが、気温…

蛙1 (ウシガエルを食べたこと)

牛蛙ボリュームちょっと下げてくれ 田んぼは一面の緑になった。若い苗を揺らして青田風が吹きわたる。 道脇の田んぼをのぞき込んだら、蛙の仔がごちゃごちゃッと集まっていた。オタマジャクシから蛙になったばかりだと思われる。エラ呼吸から肺呼吸に切り替…

朱い夏

鬼百合や弾け咲く瞬(とき)今朝も見ず 雨が上がった朝、ぱっとオニユリが咲いた。今年は玄関近くのプランターや花の鉢から茎が20本ほど立ち上がっている。自然に増えたものだ。二三日したら花が10個以上になってきて賑やかになった。豪快で気分がいい。アゲ…

マツバランをみつけた

万緑やわれまた植物細胞を持ち 日陰を探して、山の農道に車を停めてぼんやりしていたら、脇の石積みに変なものが目に入った。初めて見るもので、花なのか枝なのか何だか全く見当がつかない。まわりはツタや花の終えたテイカカズラなどが繁茂していて、その隙…

「半夏」生と「半夏生」

半夏生白さは私の病気です 七十二候に半夏生(はんげしょう)がある。七月初めの5日ほどを指している。 で「半夏生」という草だが、ドクダミの仲間で葉の一部が白くなる特徴がある。わが庭にも病的な白い葉を何枚か光らせていて、異常に目につく白さである。…

サクランボ または「桜桃」

皺の口すぼめて爺婆サクランボ 太宰治に「桜桃」という短編がある。多分高校の頃読んだが全く内容を覚えていない。ふと思い出して、サクランボをつまみつつ青空文庫で読んでみた。これを小説というのかどうかわからないが、太宰文学そのものだなと思い、そし…

庭にカボチャを

庭園にかぼちゃ咲かせてポストモダン 農協で野菜の苗を見ていたら、カボチャの苗が目にはいり、ふいにカボチャを植えてみたくなった。といっても畑はない。 さてどこに?と考える。 こいつは野生的だからどこでも大丈夫そうだ。では庭の花畑、野草が乱雑に植…

鉄腕アトムが俳句を作る?

父の日や子に叱られつつ手にスマホ 図書館から「豪華版 鉄腕アトム」を借り足しながら読んでいる。全部で14巻あるのだが、残念ながら1巻と3巻がみあたらず、1巻の一番目がいつ書かれた何だったのか分からない。この版じたいもう古いもので本も相当ガタが…

キキョウソウの仲間たち(キキョウ科)

振り向かずただ夏野行く二人かな 梅雨に入ったという夕方、散歩していると道の脇にキキョウソウを見つけた。 紫のぱっちりした花を数個つけて、茎はまっすぐに30センチ以上も立ち上げている。花の大きさは1.5㎝くらい。茎の下部に見えているのは閉鎖花と…

新じゃがとジャガイモの実

新じゃがや飛び出してくる風の中 3月の初旬に、いたずらで埋め込んだジャガイモ。茎が黄色く与太ってきたので、一つを掘ってみた。植えてから100日が目安、と聞いたので、少し早いし、花壇の端っこに埋めた株なので、さあ、期待はあまりできないが・・・。 …

富士市にSAYPEさんの地上絵

公園は老々介護と新樹かな 富士市の公園に巨大な地上絵が描かれた、しかも世界的に有名なアーティストが描いた、というニュースを見て、好天の爽やかな中、半信半疑で出かけてみた。 (写真は新聞から) 新聞情報によると、フランス出身のランドスケープアー…

茶摘み唄 新緑の海に

茶娘は老いて新芽の茶山かな 茶どころ静岡の茶山は、いま美しい緑の樹海になっている。この連休は茶摘みの真最中で茶農家さんもこの時季は大忙しだ。 けれど、山を歩いていると荒れた茶畑が非常に目につく。父祖伝来とはいえ条件の悪い茶山を守っていくのは…

エビネに出逢う

空山に人語の響きエビネ咲く エビネを見にいかないか、と友人に誘われて、野生のエビネを見にでかけた。彼は昨年たまたま近くの山を歩いていて、花に出くわしたのだそうだ。 「もういい頃だと思うけど、咲いていればいいんだが」 と心配そうにしている。山の…

かきつばたと牧野富太郎博士

かきつばた少年愛は院の中 藤枝にある田中城跡に、カキツバタを見に出かけた。 この城跡は、現在は学校敷地となりおもかげは少ないが、その一部の下屋敷跡が整備され、本丸櫓や茶室なども移築されていて、わずかに歴史を偲ぶことができる。カキツバタが咲く…

家康の奪い取った諏訪原城(島田市)

戦国の砦やワラビの摘みどころ (案内所にあるジオラマ) 静岡市の駿府城、浜松の浜松城は家康ゆかりの城だが、その中間くらいの位置に諏訪原城という山城跡がある。あまりメジャーではないが、国指定の史跡になっていて、その遺構の大きさからみても全国屈…

ツバナの飛行場から

出立や茅花(つばな)偃(のえふ)す飛行場 新緑に誘われて、車を走らせているうちに「富士山静岡空港」に行きついた。ここは全国有数の茶の産地、牧之原の台地で、一面の茶畑が広がっている。茶の芽はまだ伸び始めたばかりで、茶摘みまでにはもう少し必要だが、…

古いレコードプレーヤーの再生

歳月も人もアナログ春の果て 息子が古いレコードプレーヤーを直してくれた。 DENONのDP-1200という代物で50年前に安月給でやっと買ったものだ。高級ランクのものではないが、壊れてからも捨てないでそのまま置いておいた。それを持ち出して直してくれたのだ…

花の三月尽

名草の芽空を恋うるや空を指し (ヒトリシズカ) 今年はまた一段と花が早い気がしている。 気象観察の資料として庭の花などをメモしておく。 アマドコロが数日前に芽吹いてきた、と思ったらもう咲き始めた。ヒトリシズカは満開。ニリンソウもほぼ満開。タン…

老朋来る

老朋の来り語らう日永かな (リュウキンカが満開) 中学時代の友人が遠くから会いに来てくれて、楽しい懐かしい時間を過ごした。この10年ほど会っていなかったろうか。お互いに白いものばかりになっていて、お互いに驚いた。昔の故郷の話に花を咲かせ、故人…

草の芽 五態

地球いまこの一粒の芽生えかな 草の芽が躍動している。 日当たりが遅い我が家の庭にも、ようやく芽生えがやってきた。草の芽は、土の中で蠢いて騒ぎ、もがいて外に出て、始めはあれッという感じで大人しいが、すぐさま遠慮なしに伸び始める。その顔を見てい…

河原でヤナギが満開

柳咲いて大河目覚めの狂詩曲 安倍川の中流を歩くと河原のヤナギが満開だった。眩しいほどのディープ・イエローに咲き誇っている。 まだ風は冷たく傾き始めた午後の光の中で、おびただしい数のヤナギの樹々が燃えるように浮かび上がる。石ころの両岸に沿って…